会計士受験時代、お金がなくて借金に頼っていた話

はじめに|生活は、思っていたより脆かった

今振り返ると、
あの頃の自分は、
お金のことをあまりにも軽く考えていた。

会計士試験の勉強をしていた時期、
生活は、思っていた以上に脆かった。

これは、
会計士受験時代に、
借金に頼るようになっていった過程を、
そのまま書いた記録だ。

第1章|本当に苦しくなったのは、大学を卒業してからだった

私は、大学在学中だけでなく、卒業後も会計士試験の勉強を続けていた。
在学中は、自分のアルバイト代に加えて仕送りがあったため、生活に困ることはなかった。

もちろん余裕がある生活ではない。
それでも、自分の好きなスタバを、毎日ではないにせよ、普通に買える程度の余地はあった。
少なくとも、お金のことで強い不安を感じることはなかったと思う。

状況が大きく変わったのは、大学を卒業してからだ。
卒業後は、親からの援助を受けることができなくなり、生活費はすべて自分で賄わなければならなくなった。

卒業してすぐの頃は、まだ楽観していた。
学校もなくなり時間はある。
週に4日ほど、1日6時間アルバイトに入れば、月におよそ10万円は稼げる。
残りの時間を勉強に充てれば、十分に両立できると考えていた。

「これなら何とかなりそうだな」
正直、その程度の認識だった。
この時点では、お金の問題を真剣に考えていたとは言えない。

しかし、現実は甘くなかった。
大学を卒業して初めて、自分で自分のお金を管理することが、どれほど難しいかを実感することになった。

会計士受験生であるにもかかわらず、月単位の資金管理すらまともにできていなかった。
今振り返ると、その事実をとても恥ずかしく思う。

第2章|数字だけ見れば、ギリギリ成り立っているように見えた生活

今振り返ると、当時の自分は完全などんぶり勘定だったと思う。

当初に立てていた計画は、かなり単純だった。
アルバイトで月に10万円ほど稼ぐ。
家賃3万円のアパートに住み、光熱費1万円、通信費1万円。
交際費は受験生だから0円、と考えていた。

家賃と光熱費、通信費さえ払えれば、最低限の生活はできる。
そう考えていた。
この計算だけを見ると、月10万円あれば生活できて、むしろ数万円は余るようにも見える。

だが、この前提自体が甘かった。

そもそも、月10万円を安定して稼ぐことが難しかった。
バイトがある日は、最低でも1日4時間は勉強時間を確保しようと考えていた。
ただ、今思えば、その時点ですでに無理があった。

当時の自分は過年度生で、主要な講義は一通り聞き終えていた。
そのせいもあって、「正直、そこまでやることは多くない」という、今思えばかなり危うい感覚を持っていた。
1日4時間でも毎日続けられれば、何とかなるのではないかと、本気で思っていた。

しかし、現実は違った。
授業を聞く日は、それだけで3時間かかる。
4時間確保しても、それだけで時間はほぼ終わる。
残った時間で他の科目に手を出そうとしても、満足のいく勉強にはならなかった。

気づけば、バイトを減らすという選択をすることになっていた。
収入は月7万円程度まで落ち、当初想定していた余裕は一気になくなった。

それだけではない。
毎日勉強を続けていると、どうしても疲れが溜まる。
ストレスも溜まる。
月5万円前後での生活が続けば、なおさらだった。

週に1回だけ、と決めて、少し高めの外食をしたり、スタバに寄ったりする。
最初は完全に予定外の出費だった。
ただ、「これくらいなら大丈夫だろう」と自分に言い訳をし始めると、その頻度は少しずつ増えていった。

週1回が、いつの間にか週2回、週3回になる。
こんな生活を続けていれば、お金が残らないのは当然だった。

そんな状況の中で、管理会計論の勉強をしているとき、ある考えが頭をよぎった。
それが、「借りる」という選択肢だった。

第3章|「支払いを遅らせられる」という考えに救われた気がした

管理会計論では、「キャッシュ・コンバージョン・サイクル」という考え方を学ぶ。
簡単に言えば、支払いは遅く、回収は早い方がいい、という発想だ。

学生時代、借金に対してかなり強い抵抗感を持っていた自分にとって、
この考え方は少し意外だった。
お金は、できるだけ早く払うものだと思っていたからだ。
それが、必ずしも悪いわけではないという発想が、頭のどこかに残った。

そんなとき、クレジットカードのことを思い出した。
使ったその場ではお金が減らず、支払いは翌月以降になる。
当時の自分にとって、それはかなり都合のいい仕組みに見えた。

そうして、人生で初めてクレジットカードを作った。

カードを使い始めてから、生活の中心はほぼキャッシュレスになった。
支払いが滞ったこともなければ、大きなトラブルが起きたこともない。
少なくとも表面的には、特に問題は起きていなかったと思う。

ただ、クレジットカードに慣れていくにつれて、感覚は少しずつ変わっていった。
現金と違って、「今日いくら使ったか」が実感として残りにくい。
すでに使っているのに、「まだそんなに使っていない」と思い込む日もあった。

それでも当時の自分は、
支払いのことよりも、勉強を優先すべきだという意識の方が強かった。
お金のことに気を取られるより、
今は合格に向けて集中するべきだ。
そんな言い訳で、違和感から目をそらしていた。

なぜ、ここまでお金に対して無頓着になれたのか。
今振り返ると、会計士受験生という立場が、
自分の感覚をかなり鈍らせていたのだと思う。

支払いを遅らせることが、
どこかで「合理的な判断」のように感じられていた。

合格してしまえば、環境は変わるはずだ。
そうなれば、今とは違う収入がある。
だったら、この程度の無理は許されるんじゃないか。

そんなふうに、自分の中で線を引いていた。

そんな中で、会計士の過年度生コースに申し込むことになった。
本科生コースの費用は祖母が出してくれていたが、
追加でかかる費用まで頼ることには、どうしても抵抗があった。

迷った末、自分で何とかしようと考え、
クレジットカードで支払うことにした。
金額は、自分の収入や貯金から考えれば、
明らかに大きかったと思う。

本来なら、どう返すかを真剣に考えるべき場面だった。
それでも、そのときに強く感じたのは不安ではなかった。
「支払いを先に延ばせた」という安心感の方が、
正直なところ、勝っていた。

第4章|金額を直視して、初めて現実を意識した

上級コースを申し込んだときの金額は、約35万円だった。
それに、その月の生活費が5万円ほど重なり、
合計で40万円近くになる。

この金額をきちんと確認したのは、
カードで支払いをしてから数週間が経った頃だった。
明細を開いて、最初はうまく理解できなかった。
一度画面を閉じて、もう一度開き直した。

数字を見た瞬間、頭の中が真っ白になった。
驚いたというより、何を考えればいいのかわからなかった。
その金額を、今の自分がどうこうできるとは、
とても思えなかった。

「お金がないのに、なぜこんな支払いをしたんだろう」

そう思いはしたが、答えは出なかった。
しばらく画面を眺めたまま、
何もせずに閉じた。

高校生の頃、
クレジットカードの使い方や危険性について
授業で学んだことがあった。
そのときは、「こういうことは自分には起こらない」と思っていた。
それが今、目の前で起きている。
その事実を、すぐには受け止めきれずにいた。

それ以降、
生活の中で気にすることが、はっきりと変わっていった。

現金がいくら残っているか。
次の支払いまで、どうやってやり過ごすか。

勉強している最中でも、
ふと支払いのことが頭に浮かぶようになった。
管理会計論で資金管理の問題を解いていても、
自分自身の資金のことが気になって、
内容がほとんど頭に入ってこないこともあった。

それでも当時の自分は、
「将来への投資」という言葉で、
何とか自分を納得させ続けていた。

目の前の数字を直視したにもかかわらず、
その違和感と向き合うことからは、
まだ逃げ続けていたのだと思う。

第5章|周りは同じ状況ではなかった

そんな状況の中で、まずは一度、受験仲間に相談してみようと思った。
友達がどんな生活をしていて、どの程度の金銭状況なのかを知りたかった。

正直なところ、このときの自分は、
借金まではしていなくても、みんな同じように余裕がないのだろうと、どこかで思っていた。
同じ試験を目指し、同じように苦しい立場にいる。
そんな共通点があるものだと、勝手に想像していた。

しかし、実際に話をしてみると、状況はまったく違っていた。

「実家だから、家賃はかからないんだよね」
「生活費は、親が出してくれてるかな」

そういう言葉が、特別な話題でもないように出てきた。
上級コースの追加費用についても、
家が出してくれる、という話は珍しくなかった。
もちろん全員ではないが、
自分の周りでは、余裕のある家庭の話を聞くことが多かった。

その話を聞きながら、どう返せばいいのかわからず、
曖昧に笑って相槌を打つしかなかった。
本当は、自分とのギャップをはっきり感じていたし、
それを口にするのが、どこか恥ずかしかった。

だから、その差を笑い話にするしかなかった。
「まあ、俺はバイト多めだからさ」とか、
そんな軽い言い方で、話を流した。

でも、その瞬間に感じていた違和感は、
笑って済ませられるようなものではなかったと思う。

他の人は、勉強に集中するための環境がすでに整っている。
一方で自分は、生活費のためにバイトの時間を確保しなければならない。
それでいて、成績はその友人たちよりも下だった。

大学卒業後も、クレカを作ったときも、
ずっと「何とかなる」という気持ちで続けてきた。

それでもこのとき初めて、
「何とかなる」という言葉で
自分をごまかし続けるのは、
もう無理になっていることに気づいた。

まとめ|借金より怖かったのは、考えないまま進んでいたこと

今振り返ってみると、
お金がなくなったことそのものよりも、
お金について深く考えなくなっていったことの方が、ずっと怖かったように思う。

最初は、数字上は成り立っているように見えた。
前提が崩れても、「何とかなる」という言葉で自分を納得させ続けた。
明細を見て頭が真っ白になっても、
周りとの違いに気づいても、
その場では考えないようにして、目の前をやり過ごしていた。

今なら、あの頃の判断がどれほど危うかったかは分かる。
ただ当時の自分にとっては、
そうやって考えを先送りにしなければ、
勉強も生活も回らなくなってしまいそうだったのも事実だと思っている。

自分は、会計士試験に合格した人間ではない。
だから、受験生活やお金の使い方について、
誰かにアドバイスできる立場だとは思っていない。

それでも一つだけ言えるとすれば、
自分で生活をやりくりしなければならない状況では、
お金の使い方には想像以上に注意が必要だということだ。
特に、支払いを先に延ばせてしまうものほど、
気づかないうちに感覚は簡単に鈍っていく。

これが、会計士受験時代、
お金がなくて借金に頼っていた頃の、
当時の自分の感覚だった。

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